2012年08月18日

阿波踊りの可能性 2

渉です。
本日は下北沢の阿波踊りでした。
見てくれた皆さん、ありがとうございます!

今日は前回に続き、阿波踊りの可能性について考えてみます。

さて、前回の書いたように、「人々が心から熱狂できる芸能を探求し続けたい」と思ったとき、どのような考え方を指標に置けばいいのかを今日は書いてみます。
芸の指標を誤ると、例えば目的が「ウケればいい」という考え方にもいきかねません。エスカレートすると、「モテればいい」と考える人も出てくるかもしれません。
しかし、その要素はどちらも結果であって、目的ではないのです。目先の結果を求めると、それこそ軸がぶれていきます。

芸能や芸術に携わる人がまず指標として持っているのは、感動を与えるということではないでしょうか。どんな感動なのかはそれぞれあるでしょうが、見る人の心を掴みたいと誰もが思っているはずです。
しかし、人を感動させることは数学的に答えがあるものではありません。ですから、モヤモヤのまま思い付きや何となくでいる人も多いことでしょう。
感動に答えはないにしろ、少しでもクリエイティブの指標をロジカルに考えられないかと思い、ここでまた世阿弥さんの言葉を引用します。
世阿弥は、芸で人を感動させる心得を「新しきこと、珍しきこと、面白きこと」と言っています。

まず重要なのは、「新しきこと」と「珍しきこと」は違うということです。
よく芸能や芸術は、時代を読む力が大切であると言われます。
過去からどんな経緯で今になっているのかを考え、一歩先の未来を提示することが必要なのです。
その際に、この二つの認識が非常に大切になります。
では、僕なりに、どう違うかを考えてみます。

「新しきこと」とは、時代性です。
過去にないもの。これが「新しきこと」です。
例えば、ジミ・ヘンドリックスのような音楽を今同じようにやっても、
「それ、何十年も前にジミヘンがやってるじゃん」となり、彼が登場した時代の衝撃はありません。
簡単に言えば、「二番煎じはつまらない」ということです。
仮に二番煎じでどんなに素晴らしいものを作っても、一番最初に生み出した人ほど評価されません。
それほど「新しきもの」には価値があるのです。
しかし、新しいものが突然生み出されることはまずありえません。
何かと何かが融合したり、誇張したり、視点を変えたりと、新しいものは時代の中で様々なものが化学反応を起こしながら生まれていくのです。


では、「珍しきこと」とはなんでしょうか。
わかりやすくいうと、差別化です。
今の自分の周りにはどんなものがあるのか、その中で目を引くにはどうすればいいのかが差別化ですね。
同じようなものが並んでいると人は手に取ろうと思いません。
マーケティングの考え方にも近いですね。
森の中に木を植えても、誰も気がつかないのです。
注目されるには、注目される理由があります。
優れた芸はヒットする商品と同じく、必ず差別化に成功しているのです。
独自性や強みを押し出し目にとまることが、芸を認識してもらう前提であると思います。


そして最後に、「面白きこと」。
この「面白きこと」がまた難しい。
好みは人それぞれあるからです。
しかしここで注目したいのは、決して「楽しきこと」ではないという点です。
面白いという言葉には、楽しさだけでなく喜怒哀楽の全てが詰まっています。
例えば、ものすごく悲しい映画も、ものすごく怖いホラー映画も「面白い」と思うことってありますよね。
つまり面白いという言葉は、様々な感情の奥にある、人間の欲求を満たす「何か」であると思います。
笑顔や拍手喝采がある芸はもちろん「面白きこと」です。
けれども、驚異を感じ引きつった顔や、息を呑んでいる静けさがある芸も、「面白きこと」なのです。
何が面白いのかについては思想的な話になり長くなるので割愛しますが、演者である僕らは、常に「面白きこと」の探求が必要不可欠であることは間違いないでしょう。


過去にない「新しきこと」を考えること。
今の社会を読み「珍しきこと」を考えること。
そして人間の深層心理にある「面白きこと」を探求すること。
これらが合わさって、新鮮で時代の一歩先を行く芸が見えてくるのだろうと思います。
根っからの目立ちたがり屋で人の目を引く感覚が長けていたり、生まれながらの天才肌で観客を沸かせるコツを無意識に心得ている人もいます。
しかし初心者や僕のような未熟者は、頭の片隅にこの「新しきこと、珍しきこと、面白きこと」を置いておき、少しロジカルに芸を考えてみるのがいいのではないでしょうか。
まぐれは何度も続きません。
偉大な名人や芸術家が素晴らしい作品を生み出し続けられるのは、理論的にも確固たる哲学を持っているからなのです。


わたる


posted by 創作舞踊集団 寶船 at 04:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 米澤 渉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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